外壁の主流「窯業系サイディング」の歴史と進化を専門家が解説します
日本の戸建住宅で圧倒的なシェアを誇る外壁材といえば、「窯業系サイディング」です。
現在では新築住宅の約8〜9割が採用しており、リフォーム市場でも定番の選択肢となっています。しかし、登場から数十年の間に、窯業系サイディングは大きな進化を遂げてきました。
本記事は、窯業系サイディングの誕生から最新技術までを、時代ごとの変遷に沿って詳しく解説します。
目次
1. モルタル全盛期と外壁の課題(〜1970年代)
2. 窯業系サイディングの誕生(1980年代)
3. 普及と進化の時代(1990〜2000年代)
4. 高機能化の時代(2000〜2010年代)
5. 現代の窯業系サイディング(2010年代〜現在)
6. 次世代サイディングの方向性(2020年代〜)
1. モルタル全盛期と外壁の課題(〜1970年代)
戦後の日本住宅では、木造在来工法+モルタル塗り外壁が主流でした。しかし、モルタルは職人の技術に大きく依存し、次のような課題がありました:
- 施工期間が長く、コストが高い
- 乾燥収縮によるひび割れや剥離が発生しやすい
- 定期的な塗装が必要でメンテナンス負担が大きい
このような背景から、工業製品として安定品質・短工期・低コストを実現する新外壁材が求められるようになります。
2. 窯業系サイディングの誕生(1980年代)
1970年代後半、日本の建材メーカー各社は「セメント+繊維質を高温で加圧成形」する新素材の開発を進めました。
こうして誕生したのが、今日の主流となる「窯業系サイディング」です。名前の由来は、原料を窯(よう)で処理される製造工程にあります。
当初の窯業系サイディングは以下のような特徴を持っていました:
- セメントと木質繊維を原料とした軽量パネル
- 工場生産による品質の均一化
- 木目調・レンガ調・タイル調など多彩なデザイン性
- 職人技にさほど頼らず短工期で施工可能
これにより、従来のモルタルの欠点を解消し、住宅業界に大きな変革をもたらしました。
3. 普及と進化の時代(1990〜2000年代)
1990年代に入ると、住宅着工数の増加とともにサイディング市場は急成長。窯業系は以下の理由で圧倒的なシェアを獲得します:
- 大量生産による低コスト化
- タイル・レンガ調など意匠性の高い製品展開
- 目地シーリング工法の確立で防水性能が大幅向上
この頃には、新築住宅の7割以上が窯業系サイディングを採用するようになりました。
4. 高機能化の時代(2000〜2010年代)
2000年代以降は「長寿命・低メンテナンス」が開発のキーワードに。各メーカーが新技術を投入し、性能は大きく進化しました。
主な技術革新
- 親水性コーティング:雨水が汚れを洗い流す「セルフクリーニング」機能
- 光触媒塗装:太陽光で汚れを分解し、外壁を清潔に保つ
- 多層塗装技術:色あせを防ぎ、15〜20年の長寿命化を実現
さらに、板厚が14mm → 16mm → 18mmと増し、重厚感あるデザインも可能に。立体的な深彫り加工によって、天然素材に近い質感が表現できるようになりました。
5. 現代の窯業系サイディング(2010年代〜現在)
目地レス工法・高耐候塗装の登場
近年のトレンドは、「メンテナンスフリー化」と「意匠性のさらなる向上」です。代表的な進化として:
- 目地レス工法(乾式ジョイント):シーリング不要で美観・耐久性アップ
- 高耐候無機塗装・フッ素塗装:30年近く塗り替え不要な製品も登場
- 通気工法の標準化:壁内結露を防ぎ、住宅寿命を延ばす
現在、日本の新築住宅の約80〜90%が窯業系サイディングを採用しています。外壁リフォームでも依然としてトップシェアを誇ります。
6. 次世代サイディングの方向性(2020年代〜)
技術は今も進化を続けており、次のような“未来型サイディング”の開発が進行中です。
- 環境対応製品:CO₂排出削減やリサイクル素材の活用
- 機能一体型外壁:断熱・遮熱・太陽光発電を備えるスマート外壁
- 長期保証型製品:30〜40年の無塗装保証モデルも登場予定
✅ 専門家が見る「窯業系サイディング」が選ばれ続ける理由
理由 |
内容 |
高い耐候性・耐火性 |
日本の多湿・台風・地震環境に強い |
コストパフォーマンス |
量産が可能でコストが安定 |
意匠性の自由度 |
デザイン・質感の選択肢が豊富 |
工期・施工性 |
工場生産+パネル工法で工期短縮 |
まとめ:窯業系サイディングは「進化し続ける外壁材」
窯業系サイディングは、モルタル外壁の課題を解決するために生まれ、40年以上にわたり進化を続けてきました。
いまや単なる「外壁材」ではなく、住宅の性能と価値を高める建材へと進化しています。
これからは、環境対応・スマート機能・超長寿命といった新たな価値が加わり、外壁の役割はさらに広がっていくでしょう。
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